「水道のお水はこのまま飲めますか?」
と、尋ねてきました。普通に飲めますが、BRITAの浄水ポットが冷蔵庫に常備されているのでそちらをおすすめしました。くりっとした目に丸い鼻をした愛嬌ある顔立ちのその男性はどうやら近くのスーパーで夕食を買ってきたご様子。
「What did you buy for dinner?」
と、尋ねると
「Sushi--! I love Sushi--!」
と、パックに入ったねぎとろ巻きなどを取り出して見せてくれました。
ちょうどよかったので、お茶を出してあげようと思い、上の戸棚から玄米茶をとりだしました。
「Would you like to try a green tea with burned rice?」
と、うかがってみると、
「Ei? With burned rice? Yeah, sounds interesting.」
と、興味を示してくれたので、さっそく煎れてみることにしました。
「Where are you from?」
「Indonesia.What's your name?」
「Sari」
「Oh, Sari? Good name! 」
「Terimakashi!」
と、昔習ったインドネシア語は、またここでも役立つことができました☆
以前教室でHeni先生が「サリ」はインドネシア女性のポピュラーな名前なんだと教えてくれた通り、
やはり現地の人にとっては親しみやすいようです。
彼も「Is this your real name?」と、尋ねてきたほどです。
そんな彼の名はファタヒラーさん。
でも、"ファタヒラー"というのも、なんだか日本人の「片平」みたいで耳になじみやすいなと思いました。
実際のスペルはけっこう長くてアジア特有の名前なんですけれどね。
インドネシアは一年中温暖な気候なので、避暑もかねて冬の日本へ訪れたそうです。
まだかろうじて覚えていた挨拶言葉をかわきりに、一気に距離は縮まりました。
「インドネシアには行った事あるの?」と訊かれたので、
「まだありませんが、いつか行ってみたいです。どの場所がオススメですか?」
と、尋ねてみると、どんな事に興味をもっているかで異なるといわれました。
最も有名な観光地はバリですがあそこは色んな人が行くし、ビーチ以外はそんなに・・という感じなのだそうです。そこで、「私は文化と自然に興味があります」と答えると、その場合はジャワ島の東部がオススメだと教えてくれました。伝統的な音楽や風土が楽しめる場所なのだそうです。
そんな話をしているうちに、急須からはいい香りが立ち上ってきました。
カップにかたむけると、見たことのないような透明感あふれる緑が広がって、とても安らかな気持ちになります。
初めて飲む人には少し苦味があるかな?と思い、うすめに煎れてあげたのがちょうどよかったようです。
ファタヒラーさんは、きちんと一口ずつたしかめるようにしながら
「最初に緑茶の香りがふわっときて、そのあと炊きたてのお米をかみしめているような風味があるんだね」
と、オリジナリティあふれる表現で初めて玄米茶を口にした感想を伝えてくれました。
そんな豊かな一杯のおかげで会話もますます弾んで、あっという間にうちとけることができました。
最後に "Enjoy your meal !"と、声をかけてふたたびオフィスの席についた時、なんだか安堵と充実感でとてもよい心地になりました。
昨年は、なかなかじっくりと日々の事を綴る余裕がもてませんでしたが、最近ようやくこういったゆとりある時間が増えたので、毎日とても幸せな気持ちです。
失敗続きだった最初の三ヶ月から、少しずつ私の心をほぐしてくれたこの一杯のお茶。
この味を知ったのは、ある素敵なアメリカ人女性との出会いがきっかけでした。
(つづく)
昨日の朝方、携帯が突然鳴った。
それは知らない番号からだった。
こんな時間にかけてくるような顔は思い当たらず、ふたたび横になろうとしたその瞬間、
カーテンの向こうがわに煌々とした光が透けて見えた。
何だろう・・と窓を開けてみると、夜明け前の低い夜空で、まんまるに輝く月。
東の空は少し明るくなり、初日の出がのぼり始めているけれど、
こちらがわではまだ大晦日に上った満月が、じっとゆっくり地平線に向かって動いている。
それは、とても特別な光景のように思えた。
私はどうして今、この二つを同時に見ることができたのだろう・・
あれから20時間が経って、再び自らに問いかけながらこの風景を書き起こしてみると、次第に
社会に出てからの自分自身と、
これまで育ててきてくださったすべての方々の強く温かい存在が重なって見えた。
声のない留守電のメッセージが導いた先に見えたのは、
すべての人の思いを全身で受けとめながら、手探りで歩いてきた年月の幕を
ゆっくりと下ろしていく姿だったのかもしれない。
ある時も年明けに神秘的な光をみたけれど
それとはまったく違う空気をまとった光が
静かなる凄みをもって、己の立つ場所に差し込み
意志の力を与えられたような気がした。
あの月はまたきっと自転をしながら、次の場所を照らそうとしているのだろう。
強く温かな光を身に受けながら・・
今朝早く仕事場へ向かうとき、もうすっかり息が真っ白になっていることに気がつきました。
浅草の小さなゲストハウスでの一期一会・・
書き残したい事は山ほどあるのに、活字に起こすだけの力も残らないほどの忙しい毎日。
でも、幾度となく、このスクリーンのむこうがわのみなさんに一つ一つの瞬間を心の中で綴っていました。
驚き・感動・笑い・寂しさ・怒り・感謝・・多種多様の国々の人たちと豊かな時間を過ごしてきました。それは「充実」という言葉ではまだ足りないような、それまでの自分の世界を大きく広げてくれた日々でした。
橋を渡ってから徒歩で10分ほどの支店での研修期間が終わり、8月から浅草本店で働いています。・・なんてというとなんだか老舗旅館みたいで聞こえはいいですが、元々どこかの社員寮だった小さな建物を借りて改築し、少しずつ今の形にしていった場所。背の高い外国人のゲストさんにはとても小さく感じてしまうようです。
ですから部屋の掃除はもちろんのこと、シャワーやドアや壁の色、電気系統など、すべて自分たちの手で改修し、管理しています。
施設管理から受付、予約入力・・と、ここでの仕事は幅広く、日々改善点を見つけながら素早く手を打って、次の問題をまた見つけていくという毎日。その分、進化も楽しめますが、一人しかいない時間帯にたくさんお客さんが来ちゃうと大変です。
今日はここを念入りに掃除できる!と、作業していたらピンポーンと鳴ってチェックイン業務に移り、金銭授受のあとは荷物運びを手伝って、館内を説明してまた掃除・・そんなハードな日もたまにあったりします。
そんな古くて小さなホステルを、少しずつコツコツとお客さんたちが過ごしやすいように、たくさん動き回ってくれているのが、にこの秋、26歳になった若きマネージャーKくんです。
昨日も、黙々と古くなった床をはがし、一日がかりで張り替え作業をしてくれました。
若いのにいろんなことを良く知っていて、頭の回転もよく、自分で貯蓄の仕方を研究して計画的にオーストラリア留学を果たしたという、行動派の好青年です。
社内でも特に英語が上手で、留学前に受けたテストが下から2番目だったなんて、
とても信じられないぐらいの努力家でもあります。
道案内ひとつとってもわかりやすく、メールの文章も丁寧で、組み立てがすごくよくできているなと思った文章はプリントアウトしてお手本にさせてもらっています。
とっても真面目な性格で、仕事では一切妥協しない彼です。
スタッフに対しても冗談をいう事はほとんどなく、若いのに冷静沈着です。
しかし、そんなクールな彼ですが、あるドイツ人のお客さんには「王子様」と呼ばれるぐらい、
紳士的なサポートができる人。そしてネイティブとはなんら変わらず自由に会話を楽しんでいるようです。
彼が英語の表現に詰まっているのを私はみたことがありません。なので、厳しい事があっても彼のようになる為に私も頑張るんだと思える存在です。
彼はどんなに熱い真夏でも、決してTシャツなんか着ません。
さわやかな白のYシャツに、黒のジーンズ。いつもモノトーンでまとめています。
色を入れるとしても濃紺や青のストライプといったところでしょうか。
なので、そんな彼の雰囲気に合わせて、私もワンポイントカラーで撮ってみました^^
こういう張替え作業は初めてだいうのに、センスも手際も良く、隣でパソコンを打ちながら関心していました。シャイな性格なので、絶対にカメラの方には向こうとしない彼ですが、私がとった写真をみて隣のアメリカ人の女の子が盛り上がっていると、ちらっと画面を確認して、軽く「はっ」と笑ったあと、また黙々と作業に戻るところがなんだか微笑ましかったです。
真面目で抜け目のない性格の彼から、自分のできていない事を指摘される日々は辛く、緊張してまたミスして迷惑かけて落ち込んだことも何度かありました。
そんな時、もう一人一緒に働いている主婦のちぃさんが、私のことを気にかけてくれて、「だいじょうぶ!」と、大きく一言で言い切ったあと、「ここ乗り越えればどんどんスピードも出てくるし、一人でもこなせるようになるから!」と、何度も自信をつけて下さいました。
その後、現場などで自分が苦手な作業をほかの2人はどうやってこなしていっているのかを見たり、聞いたりしているうちに、今まで不得意だったことにも少しずつ慣れてきました。
ある時、雷門よりももう少し先のところにある居酒屋さんで、鍋を囲んでミーティングをした時に、
「もっとゆっくりやっても大丈夫だよ、お客さんはちゃんと待っててくれるから」
「たしかにルーティーンも大事だけど、やっぱりせっかくここで働いているんだからお客さんとの交流も大事にしたいよね」
と、お二人が私の不安をとりのぞき、本当にここへ来た目的をふたたび思い出させて下さったおかげで、その後はするすると、きつかった縄がほどけていくように、うまく一人でも回せるようになっていきました。
この頃はずいぶんと冷え込んでいますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私の方は相変わらず忙しい日々を送っております。
6月末に入社して、早くも5ヶ月が経とうとしています。
始めの約1ヶ月は浅草から少し離れたところでトレーニングの日々でした。
130ものベッドが完備されているその支店では、沢山の印象的な出会いがありました。
武道好きだけあって、なんだか格好も様になってますね^^
ちなみに奥のアメリカ人とはこの前キッチンで初めて話をしました。
なんだか慣れた手つきで、ゆであがった日本蕎麦をざるにあけて、
さっと水で冷ましていました。
たいしたもんだな・・と、感心するやいなや、上の戸棚からブルドッグソースの大瓶を手に取ったかと思ったら、 どんぶりに盛りつけた蕎麦の上からどぶどぶと、かけ始めたのです!!
「・・・・え~~っ?なんで?・・・めんつゆは?・・だって私達はふだんこういう風には食べないよ?」
と、慌てて声をかけると、
「あ、そうなの?でも、オレいつもこうやって食べてるよ?けっこうおいしいんだぜ。」
と、日本人の意見にはおかまいなしの様子。
その瞬間、"カルチャーショック"という茶色いどろっとしたマグマが彼の手から、茹でたてのそばの山を流れ落ちていくようでした。そんな不気味な食べ物を、ソファーでテレビを見ながら平然と食べている彼の横顔を見ていた私の目は、きっと三角だったと思います。
その夜、家に帰ってから母にそんな出来事を話すと、「おもしろいじゃない」と、
早速コンビニで買ってきた蕎麦にソースをつけて食べ始めました。
でも、やっぱり見た目がどうもしっくりこない・・
(え~なにコレ~)と思いながら、恐る恐る私も口にしてみると、意外や意外!
けっこうイケるではありませんか!
「なんだろう・・この味。なんか知ってる。あ!わかった!屋台のやきそばだ!」
「そうだね。似てるね。いいじゃない。母さん気に入った。」
「あ~・・・(モグモグ)なるほどねぇ。・・まぁ、ありっちゃ、ありだね・・」
と、二人で頷きましたが、やはり途中でめんつゆに帰りたくなる心情は、やはり同じ日本人でした。
私はこの日、昔の日本人が欧米人を「ソース顔」と表現した、その言葉のルーツを初めてみた気がしました。
